父の介護 ー ぼく、何も悪いことしていないのに


父の部屋の入り口をふさぐように床にふとんを敷き、
私はそこで寝るようにしていた。

もともと元気だったころから、父は夜中には何度も起きてたばこを吸っていた。
認知症になってからは、昼夜逆転がさらにひどくなった。

昼間にはなんとか寝させまいと電動ベットのせもたれを90度まで上げておいたり、
常に声をかけたり。もちろん、デイサービスに通ってもらったり。

それでも父は毎晩30分ごとに起きてきた。

ベッドから起き上がるとすぐ目に入る場所にポータブルトイレを置いていたけれど
目を離すと部屋の違う場所に用を足してしまう。
だから父の気配を感じるとすぐに私も起き上がり、
トイレ介助をしていた。


そんな毎日が続いて、私の精神はあっという間に限界に近づいていった。
父に激しく、厳しく怒鳴るようになった。

そんな時、父がポロっとつぶやいた。

「ぼく、何も悪いことしていないのに」

その瞬間、私の前に小さな男の子が見えた。
親から厳しく育てられた、小さくて頑張り屋さんの男の子。
今なら虐待と言われるような環境で育った父。

私はその場で、わんわん泣いてしまった。
罪悪感。
介護をうまくやれない挫折感。
自己嫌悪。
そして、あの父はもういないんだという悲しみ。

おつかれさま ー 父の記録
Maktub — 必要な時に必要な事が起きる

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